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瞬間的に憧れることが少なくなった
私は人に憧れやすい性質で、一緒に働くデキる人や業界で活躍している人をいつも羨望の眼差しで見ていた。だが最近はちょっと変わってきていて、ひとつの出来事ではなかなか判断できないな、と感じている。
例えば何かのサービスを作ってそれがバズったとして、大事なのはその後ちゃんと良いものに磨いていき数年後も愛されるサービスであること。例えば何か素晴らしい仕事をしたとして、大事なのは環境や時代が変わっても同じように活躍できるかということ。その瞬間の「点」ではなく、連続した「線」で評価したいという気持ちがある。
こう考えるようになったのは、社会人として十数年過ごした時間の長さによるものだと思う。色々な人や物事がバズっては消え、またバズっては消えていく。世間は新しいものを求め、すぐにそれを消化して飽きていく。コロナ禍にClubhouseというサービスが流行ったが今私の周りで続けている人はいない。一世を風靡したFacebookですらもう見なくなった。その時代を象徴するサービスを作れたことは偉大なことだと思うが、過去ほどは憧れなくなってきた。
「人生後半の戦略書」という本を最近読んだ。優れた仕事をした作家や研究者はたくさんいるが、彼ら全員が幸せだったかというとそうではない。職業のスキルは30代後半から50代前半にかけて落ち込む傾向にあり、この時期は若い頃の自分を超えられない葛藤に苦しめられる人が多いそう。早い時期に大きな成功を収めた人ほど影は大きくなり、富と名声があっても人生の幸福度は低くなってしまう。本の中ではそれを避けるために無防備な自分をさらけだしたり、深いテーマについて話せる少数の友人を探したりなど具体的なアドバイスが紹介されている。
業界で華々しく活躍する人に無条件で憧れることが減った一方で、身近な人のことをよく見るようになった。自分の好きを継続している人、価値観をアップデートし続けている人、自分のスタイルを確立している人。世の脚光を浴びずとも良い仕事をし続けてる人はいて、そういう人には相変わらず憧れて影響を受けている。それは健全な羨望ともいえそうで、自分一人では凝り固まってしまう頭に良い刺激を与えてくれる。