Feedback Loop
センスとロジック
センスとロジック。何か良いものを見たとき、それを分析するまでもなく良いと感じる。まず最初に良いと感じ、その知覚の後にはじめて言語化として良い理由や特徴を挙げることができる。
Webサービスを作るときは感覚と論理の両方の脳が必要になる。心地よいアニメーションをつけたり、居心地が良いと思える空間づくりは感覚的に。クチコミが広がる仕組み、売上があがるロジックは論理的に。完全にどちらかに振れるものでもなく、実際はグラデーション。アニメーション時間や色使いもロジックで積み上げることができるし、サービス拡大の仕組みも「人がこう思うから」など感性的なアプローチだったりする。センスを分解したのがロジックで、目に見えない細かいロジックの積み重ねがセンスになったりもする。
チームで働くとき、言語化の力、つまりロジックがより必要になる。全員で同じ方向を向いたり、納得感を持って進めるためには明文化・明確化することが必要。センスは言語化できない場合も多いので必然的にロジックへの比重が高まる。説明上手になるのは良いが「なんとなく良い」「なんか嫌に感じる」という素の感覚も大事にしたい。まだ言語化ができないだけで、それも重要な自分のアンテナの一つだ。
チームでもセンスで決められる場合がある。それはメンバーが近しい感性を持っていて、「なんか良い」「わかる」と言語を挟まずとも一体になれる場合だ。Official髭dismやSEKAI NO OWARIはかつてバンドメンバーでシェアハウスをしていた。同じ映画を観る、同じ料理を食べると感性は自然と近くなっていく。お笑い芸人のロングコードダディの2人は若手の頃同じ家に住んでいた。何を面白いと感じるか、どういうことで笑うかを知れたあの時間が今に繋がっているとインタビューで答えている。一緒に住むのは中々ハードルが高いが、仕事でも長年一緒に働いた人とは思考が近しくなる。言語化できない部分でも合意がとれ、感覚的な要素も取り入れやすくなる。
山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』という本がある。かつて経営者はMBAを取っていたが、今はアートスクールに通うことが増えているらしい。MBAで学べるのはロジックで、ロジックは基本的に誰が使っても同じ結論を導き出せる。昔は前提情報の多寡があったが現在はインターネットの発展により誰でも簡単に情報にアクセスできる。そうなるとロジックでは差別化が難しくなり、いまはアート的な発想を伸ばそうと芸術を学ぶ機会を求めているそう。ロジックは正しいがそれだけでは面白味が薄い。センスは美しいがそれだけでは人を巻き込む力が作りにくい。自分の感性を大事にしつつ足回りはロジックで固めていくような、白黒ではない両取りの姿勢で構えたい。