要素が多くても情報の交通整理がなされていればシンプルでいれる
Webサービスのデザインでシンプルさを保つのは難しい。最初は機能が少なくてシンプルに作れていても、要望に応えたり機能の追加をしていくと要素はだんだん増えていく。シンプルさを維持したいがために機能追加にNGを出していては成長が止まる。つまり要素の増加を受け入れ、さらにシンプルなままでいるという相反するものをどう実現するかが知恵の出しところになる。
ヒントとなるのが情報の交通整理だ。エンジニアになりたての頃、競合調査でeBayという海外で人気のオークションアプリのデザインを調べたことがある。オークションアプリは決済や配送も絡むため複雑になりやすい。さらにeBayは老舗で、歴史的に追加されてきた機能も多くてかなり要素が多い。それなのに使ってみるとすぐに理解でき、アプリ内はすべて英語表記だったにも関わらず感覚的に操作することができた。
チームの先輩たちと話したところ、その理由は「情報の交通整理」にあるという結論に至った。例えば購入画面ではクレカの情報や配送先住所などさまざまな入力が必要だが、それを一つの巨大なフォームで入力させるのではなく小分けにする。ゴールが見えない中走るのは辛い。「ステップが10個あって、いまは4個目です」と教えてもらえれば時間がかかっても頑張れる。全体を俯瞰させ、注意の払い先をステップごとに細かく分解することで集中力を保たせる。10年以上前の出来事だが、要素の多さイコール複雑とは限らないのか、と感動した記憶がある。
シンプルさを保つ別の方法として、ステップを減らす方法を考えてみる。例えば3つの操作があるとして、それをまとめて行える1つのボタンを用意するとどうだろう。見た目上は作業が3分の1になっているが、その内部で何が行われているか理解できずユーザーは学習の機会を失う。学習できなければ予測できない。毎回そのボタンを押すときに小さな覚悟が必要で、それは目指すべき「手に馴染む」状態からは程遠い。もちろんボタンが100個置かれていてもそれはそれで学習コストが高いので実際はバランスになる。どこを省略してどこはすべて提示するのか、それも情報の交通整理のひとつと言える。