良いパサーになりたい
「黒子のバスケ」という少年漫画がある。バスケ部の高校生が舞台だが、特別な能力を持つ5人が登場する。運動能力がめちゃ高い、相手のプレイスタイルをすぐ真似できるなどそれぞれの特徴を持つが、その中の一人である赤司という司令塔は予知能力を持つ。はじめは予知をもって敵チームの動きを読んでいた赤司だが、試合後半では味方への最高のパスを出すことに使われる。味方が最も欲しいタイミングや回転でパスを出す。究極のパスを受け取った選手は気持ちよくプレイできてゾーン(の一歩手前)に入る。
チームで仕事をしてる時、たまに赤司のパスのことを思い出す。相手が困っているタイミングで声をかける、質問に十分な形で答える、不安を抱く前に状況をシェアして落ち着いてもらう。一つ一つのやり取りは雑でも成り立つが、最高のタイミングや内容で渡せれば無駄なやり取りでエネルギーを消費せずに目の前のことに集中できる。仕事の内容だけでなくその意義やサービスの目指すところを伝える。優秀なチームであるほど自分の仕事が世の中の何に役立っているのかを気にするので、モチベーション高く取り組むことができる。こうやって周りがゾーンに入れるようパスを出すのが理想形。
最近はAIが急速に進化し、コミュニケーションする相手が人からAIに変わってきた。作って欲しいものを整理してAIにチャットする。AIが作ったものを見てズレがあったら指摘する。AIにはモチベーションという概念はないけど、良い指示を出せれば良いアウトプットを出してくれる。逆にまとまりのない指示では右往左往して逆に時間がかかってしまう。将来的には曖昧な指示でも完璧にこなしてくれるアシスタントが誕生してるかもしれないが、今のところは指示のレベルがそのままクオリティやスピードに繋がる。AIへの良いパスとは明確で簡潔、そして必要な前提情報を含んだ指示である。チームのメンバーが人からAIになっても、良いパスが求められることは変わらない。