人間力=チャーム+徳

2025/01/15

以前社外の勉強会に参加したとき、「仕事に人間力は必要か?」という話になったことがある。そのときは人間力が何を指すのかピンと来なかったが、確かに素晴らしい仕事をする人は人望があり、それは仕事がデキることとは別軸に思える。最近読んだ「リーダーの戦い方」で人間力を解説する章があり、そこにあった「人間力=チャーム+徳」という方程式がしっくり来たので書いておきたい。

チャームはその人の魅力で、生まれ持った個性に近い。一緒にいると楽しいとか、失敗しても笑えるとか、そういった個人の持つ愛らしさ。人それぞれ違うものを持っている。徳は普段の行動で、約束を守ったり他人に親切にしたりすることで蓄積される。徳を積むと周りから信頼される。この二つの要素の足し合わせが人間力ではないか、というのが本書の主張だ。

十年以上社会人として働いてきたが、同じ言葉でも言う人によって重みが違うのは感じていた。たとえばいつも遅刻してくる人が「11時集合」と言ってもあまりアテにならない。逆に毎回きちんと時間通りに進行する人が言えばその時間は厳守になる。いつも適当な人が軽いノリで言った言葉は流れていくが、真面目なイメージの人が軽く意見を言うとそれが真剣に取り沙汰される。ピカソの逸話で、30秒で描いた絵に1万ドルを請求して驚いたファンに対し、「30秒ではない。30年と30秒で描いた絵だ」と言ったという話がある。表層的には同じでも裏側に蓄積されたものがある。

芸人にも「ニン」という言葉がある。この人はサッカーのニンがある、みたいな使い方。そのイメージを持たれてない人がいきなりサッカーの話をしても受け入れられない。それは聞き手に準備ができていないから。2020年においでやす小田がM-1の決勝で2位になったとき、「これで説明書が配れた」と表現されていた。多くの視聴者が見ている番組で「いじられて大声でツッコむ人」というニンが形成される。これは優勝よりも価値が大きいかもしれない。

チャームは先天的な要素が大きい。自分のチャームとまるで違う人を真似してもうまくいかない。OSによって動かせるアプリケーションは違う。自分のチャームを理解し、それに近しい人から学ぶ方が上手くいく。自分のチャームは人からよく言われる印象や、無理なく続けられているものなどを深掘りすると見えてくる。思い返せばそれを知らずに多くの失敗を繰り返してきた。人生まだ長いので、ここからでも間に合うと信じたい。