ユーザーインタフェースの発明
ユーザーインタフェース(UI)とはユーザーがサービスを利用する際の接点のことで、デバイスやWebサービスのレイアウト、ボタンの外観などのことを指す。Webサービスを作る際にはUIは重要だ。それがボタンだと分かるようにデザインすることでクリックできることをユーザーに伝えられる。赤文字にしてゴミ箱アイコンを添えることで危険な処理なので慎重に行ってほしいことを伝えられる。
例えばパソコン上の「フォルダ」は、実際のデータ構造がそうなっているわけではなく、ユーザーが概念を理解しやすいように現実を真似て表現されている。私たちは見慣れたものだと安心し、その使い方を自然と理解できる。iPhoneが登場した当初、現実世界の要素を画面上に落とし込むスキューモフィズムというデザインが流行っていた。これはまだアプリという概念が浸透しきってない時代に、その用途や目的を現実になぞらえて伝えるためだったといわれている。
素晴らしいUIが考案され、それが真似されてスタンダードになるという流れがある。例えはページの末端までいくと次が読み込まれるオートページング。次のページに進むボタンを主体的に押すのは面倒くさいが、自動で読み込まれたら受け身的に読み続けてしまう。人間心理を突いたこのUIは滞在時間を多いに高め、いろんなサービスがこぞって真似をした。Netflixの番組でこのUIを最初に作った人にインタビューするシーンがある。彼は人の時間を奪いすぎるUIを作ってしまったと反省していた。滞在時間を伸ばすのはサービス事業者にとっては目指すところであり、ユーザー個々人の時間を奪うと分かっていてもやり続けてしまう負の側面がある。
スマホアプリでニュースなどを見ているとき、画面を下に引っ張ると最新の投稿を取得できるPull to RefreshというUIがある。Twitterのクライアントアプリが最初に実装したものだと記憶している。Twitterでは投稿が縦に並び、上にあるものほど最新の内容になっている(当時は完全に時系列だった)。画面を下に引っ張ることで、さらに上にあるもの(=最新のもの)を取得するというのは概念として理解しやすい。また、最新の情報が欲しいときはあるが、タイムラインを見ている間は基本的に不要な要素である。更新ボタンをベタで置いてしまうとその分スペースが必要になり、画面が小さいスマホでは邪魔に感じてしまう。必要なときだけ必要な場所に現れるPull to Refreshは素晴らしく、その後Appleの標準のUIとなり各サービスで実装されるようになっていく。
メルカリを開くと商品が横3列のグリッドで並び、たくさんの商品が揃っていることがユーザーに伝わる。商品名はなく、写真と価格だけが並ぶ。商品名を表示するとそこで工夫して目立とうとする力学が生まれる。例えば「2/1まで値下げ中!」のような表記をしたくなる。これをやり始めるとゴチャゴチャして見るのに疲れるし、売るのにテクニックが必要と感じると初見が近寄りがたくなってしまう。メルカリとしては多くの人に売り買いに参加してほしい。メルカリ側が用意しているキャンペーンバナーも意図的に質素にしている。もちろんメルカリのデザイナーであればエレガントなデザインで作ることもできるが、それをやるとユーザーが撮った商品写真をそこに並べるのが申し訳なくなり出品のハードルになる。目指したい売り場の雰囲気があり、それに沿ったUIが考えられている。