「漫才過剰考察」を読んだ
「漫才過剰考察」はM-1を2連覇した令和ロマン・くるまの著書。読む前のくるまの印象はお笑い分析屋。流れを読んで戦略を立てそれを自ら実践する。〇〇はなぜ人気なのか、みたいなお笑い評論にはあまり惹かれないので本書も敬遠していたが友人に薦められて購入。これがめちゃめちゃおもしろかった。彼の分析は巷に溢れるものとは違い本質的で、そこに彼のバイブスが乗っており読み物としてとてもよかった。
歴代のM-1大会を分析し、なぜこのタイミングでこのコンビが王者となったのかを彼なりの自論で紐解く。最年少で不利なはずの霜降り明星がなぜ勝てたのか?お笑いブームの拡大はM-1の採点にどう影響したのか?年を経るごとに変わるトレンドをなぞりつつ、その時起こった変化が説明されていく。M-1への愛も随所に現れる。この本で熱量高く言及されるネタをもう一度見たくてAmazon Primeを開いた。M-1への没頭が流れを読む力に変わり、トップバッターながらに4種類の中から適したネタを選んで見事優勝するという2023年の結果に結びつく。
自分の感想では、くるまは「ユーザーファースト」なお笑い芸人。その日の観客を見てネタを選ぶ。子供が多いとか老人が多いとかはもちろん、誰かのこのボケがウケなかったから今日はこっちのネタにしよう、みたいな観察力がとても高い。たぶんビジネス書を書いたらベストセラーになる。実際雑誌Forbesでヤフーの会長の川邊さんと対談していた。考え方が仕事ができる人のそれで、没頭できさえすればどの分野で活躍できそうに思える。
末尾には霜降り明星・粗品との対談。これも最高に面白い。個人的に霜降り明星は大好きで粗品のYouTubeもほぼ観ている。「しもふりチューブ」「粗品 Official Channel」の2つを毎日更新しつつ、週3本のペースで「粗品のロケ」というサブチャンネルも運営する。しかしそれをすごいことだとは思っておらず、テレビやYouTubeについても「〇〇はオワコンになる」などの特段の思いはない。普段得意だからやっていると言っている通り、お笑いのスタンダードが高くて雑談でもコンテンツになってしまうように見える。YouTubeでもたまにお笑いへの思いや天下の取り方について喋っているが、この対談はくるまへのリスペクトもあってか体系立っていて筋が一本繋がっている感じ。放っておいても天下は取れるので今はそれを最短にするバイパスを探しているという表現。最近の粗品の動きが総括されている。
粗品のコンテンツで好きなのは「Finance Fan」と「カジノ」。前者はファンを集めてお金を誰から借りるか粗品が選抜していくリアリティーショー。後者は韓国のカジノで1億勝負するという企画で、どう転んでも面白くできる粗品の技術に展開が絡んで傑作となっている。まだ観てない人はよかったら観てみてください。