価値は自分で感じるもの、評価は他人がつけるもの

2024/10/07

価値と評価は似ているようで違う。価値は自分で感じる主観的なもの。例えばこの日記はなくても世の中の人にとって全く問題ないが、自分的には続けることに意味を感じているので続けている。一方で、評価は他人が下すもの。絵画や音楽、Webサービスなどあらゆるものが評価の対象となるが、その時々の世間の状況や環境に影響されながら誰かが評価する。そのため死後に作品が評価されることもある。価値と評価、この二つは分けて考えておきたい。

前職でHack Dayというイベントがあった。エンジニアの祭典なるもので、24時間でひとつのWebサービスを作る。この間は通常の業務はストップして、好きなチームで参加し、好きな技術を使い、好きなものを作る。私はよく友人に声をかけて一緒に出ていたが、この時間がとても楽しかった。自分たちが作ってみたいと思うものを作り、そのために必要な技術を調べて勉強する。仲の良い友人と長時間、サービスの仕様や技術、なんでもない話をしながらものづくりする。土日12時間ずつ、という普段の仕事とは違うタイムスパンなのもゲーム感があって面白く、24時間で作り切れるように仕様やスコープを調整していく(のちに平日8時間×3日に変わった)。全員がものづくりが大好きで集まっている人で、会場には活気がある。その空間も好きだった。

Hack Dayは最後に作った作品を発表する時間がある。1チーム5分で順番に発表していく。参加チームも多いので次々とアイデアや作ったものが発表されていく。自分が知らない技術、思いつけないアイデアがたくさんあり、聞いていて勉強になる。自分たちの番をドキドキしながら待つ。チームメンバーの誰かが代表で発表するが、私も何度か発表した。作ったものの魅力を最大限伝えたくて、共感できる課題を最初に提示したり、キャッチーなフレーズを並べたり、開発同様自分の持てるものを注ぎ込んだ。

さて、モヤりポイントはここからで、Hack Dayでは発表の後、いくつかのサービスが表彰される。審査員が話し合って授与される最優秀賞、新しい技術を使いこなしたチームに授与されるHappy Hacking賞、それから技術提供などに協力してくれた各社による協賛賞、社長賞などがある。この時間は自分にとってとても嫌な時間で、入賞したものは良くて、入賞しないものは良くないと判別さているように感じた。あれだけ良い時間を過ごして、ものづくりに熱中して、作ったものを誇る気持ちもあって、それなのに誰か知らない人にそれを価値なしと判断される。当時は今よりもっと人から評価してもらいたい気持ちがあったので、これは辛い体験になった。結局6, 7回参加して一度も受賞はしなかったが、賞欲しさにマイナーな技術を使って無理やり狙いに行ったりもした。それでも選ばれない。賞もなく、本当に作りたかったものを作ってもない。もう意味不明な状態である。自分の浅さにショックを受けたりもした。

ものづくりに熱中している24時間、これには価値がある。自分が心から楽しめて没頭できる時間。またこういう時間を過ごしたいと思う。発表の後の表彰、これは評価である。他人が作品をみて、その人の基準で評価をつける。評価はその人の主観で、絶対に正しいわけじゃない。普通に間違える。しかも審査員のことをよく知っているわけでもない。そんな人たちの評価に左右される必要は本来ない。

例えばそこで表彰されなかったとして、そのWebサービスを世に出してめっちゃ人気のサービスになるというのは普通にありえると思う。Hack Dayという性質上新しい技術をうまく使ったチームが評価されていたが、別に世の中のユーザーは新しい技術に触れたいわけじゃない。自分たちの生活が便利になったり、困っている問題が解決したり、そういうものを求めている。すでに枯れた技術でも組み合わせれば便利になり、同じ機能でも見た目をかわいくするだけ刺さる相手が出てきたりする。審査はあくまでHack Dayの、あの会場のモノサシで測られただけだったと今なら理解できるが、当時は自分のつくったものが価値なしと判定されているような気分になっていた。価値と評価を混同するとこういう不幸が起きる。

基本的には価値、自分が納得できることをやれば良い。人からの評価は水物で、それをコントロールしようとすると疲れる。ただし、給料をもらったりお金を稼いだり、食っていくためには評価が必要になる。周りからの評価が高い方が有利な場面もある。そこは割り切ってチューニングし、表現や届ける相手を工夫するなどして生活できるくらいには評価を得ておく。それが出来たらあとは自分の信じるものに投資する。お金にならないかもしれないが、それをやっているだけですでに楽しいと思えるようなもの。熱は誰かに伝播するので、一生懸命やっていればどこかには繋がる。お金か出会いかはわからないが、思わぬところに行ったりもする。行き先不明な部分も大きいし、他人に理解できないけど自分には大切なものもたくさんあるので、ここは他者の評価はあまり取り入れなくて良い。評価に振り回されず、自分が価値があると思えることに素直に取り組みたい。