「楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考」を読んだ
「楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考」を読んだ。最近ハマっている楠木さんの著作。楠木さんの仕事は日々忙しくする経営者の代わりに本質を考える「思考代行業」。会社や事業についてその本質を考える。とても肉厚だったので気になったところをメモしておきたい。
まずはイノベーションと連続性について。IT界隈ではよく「イノベーションを起こそう!」と言われるが、イノベーションの本質を理解している人は少ない。イノベーションは改善ではなく革新。非連続な変化に挑まなければならない。なぜイノベーションが難しいのか?それは人々が非連続な変化を拒むから。セグウェイのようなまるで新しいデバイスが出てきても、日常生活の延長で必要ないので流行らない。SONYのウォークマンはイノベーション。それは音楽を聴くという日常の延長にあったから。ユーザーの変化は連続的、しかしその体験は非連続なものがイノベーション。飛び道具に手を出しても長期で上手く行くことはない。
次に抽象と具体について。現実の問題はすべて具体的に現れる。ひとつひとつ目の前に対応していくしかない。しかしそれを個別の事象として理解していると毎回バタバタすることになりノウハウが活かせない。経験や知識を他のケースでも使えるように抽象化して記憶する。この具体と抽象のバランスがセンスに出る。
仕事をしていると抽象と具体の狭間で苦しむことが多い。例えば会議で抽象的に話し過ぎて空中戦になってしまったり、逆に具体的に話しすぎて汎用性を失ったり。このバランスが上手い人にたまに出会うが、そういう人は知識を構造化して整理しているように思う。近しい概念をまとめたり、階層関係を整理して理解する。それができていると相手が理解しやすいように別の表現で例えたり、箇条書きなどを使って読みやすい文章をまとめられる。
最後にお金儲けについて。お金を稼ぐことを目的にするのは邪な眼で見られることがあるが、楠木さんの意見としては「長期利益」こそが目指すところ。アフリカの貧困を撲滅するにせよ、まずはその会社が持続的に儲からないと話にならない。長く利益を出せる事業をする、それで稼いだお金で税金を納める。こういう意見だそう。このあたりは会社経営をしたことはないのでいまいちピンと来ず。サラリーマン目線としては共感できるビジョンを持つ会社で働きたい。ビジョンの実現のために利益をあげていくことが必要というのは分かる。