Feedback Loop
1on1の思い出
新卒で入った会社では、そのシーズンで評価が高いと副社長から声がかかって1on1できるというのがあった。自分も運良く一度だけ1on1の機会をもらったことがある。
数日前に何を話すか考え、あることを聞いてみることにした。Webサービスの開発過程では、開発を滑らかにするためにいろいろなツールを利用する。当時社内ではそれらのツールを内製する傾向があった。内製は自社のデータ流出を防ぐのには有効な一方で、世の中に出ているベストなツールを使う機会が損なわれる。一方は市場で生き残るために切磋琢磨してアップデートし、ユーザーの支持を得て生き残ったツール。もう一方は社内利用に閉じ、ある期間のプロジェクトとしてメンバーが割り当てられて開発されたツール。この競争力の差は思った以上にデカい。
外の世界との分断もある。エンジニアは勉強会などを自主開催して社外のエンジニアと交流する文化があるが、そこではツールの使い方など具体的な知識がやり取りされたりする。そのとき自社ツールしか使ったことがないと深い話に参加しづらい。また、当たり前だがググっても情報がない。社内ドキュメントはかなりまとめてくれていたと思うが、ユーザーが使ってみて感想を書いた記事とか、いろんな角度からのチュートリアルの記事はない。ここらへんは微妙に歯痒いところだった。せっかくの機会なので、こういうモヤモヤを聞いてみることにした。
1on1の場でそれを伝えると、その意見は受け止められた上で具体的にツールのどこが使いづらいかを聞かれた。自分がいくつか列挙すると、「ありがとう。その内容は部署にフィードバックしておく。もし君が今後そういうツールを作る立場になったら、品質にこだわったものづくりをしてね」と言われた。この言葉はなんとなくずっと心に留まっており、何かにコメントをするときは自分もプロの仕事ができているかを自問するようになった。代案がなくてもコメントはして良いと思っているが、批判する前に立ち止まって自分の仕事を振り返るのは意味がある。
こうして書いていると自分の聞いたことへのストレートな回答をもらってない気がするが(内製文化の是非)、自分の仕事を鑑みる機会となったのが印象に残っていて他は忘れているだけかもしれない。今後何をしていきたいか聞かれ、大人数のチームのリーダーとかではなく仲良い数人で楽しくものづくりをしたいと答えたら、「それなら技術力を磨いていくといいね」と言われる。副社長としての回答というよりはWeb業界で経験を積んできた一人のアドバイスという感じがして、立場があってもフラットに接するのはすごいな、などと感じた覚えがある。
大企業で良い仕事をするには二つ上の職位の立場から考えると良いという説がある(メンバーなら部長目線で考える)。この説は一理あると思って支持しているが、経営陣くらいになると日常で接するシーンはほぼなく、何を考えているか想像することは難しい。1on1に限らず対話の話として、いろんな立場・職種の人と話す場があるのは長期的にはとても良いことがあると振り返ってみて思った。