「自分がされて嫌なことを人にしない」はウソ
2025/01/23
小学生の頃、教室の黒板横にスローガンが掲げられており、そこには「自分がされて嫌なことを人にしない」と達筆な字で書かれていた。今思えばこれは違う。正しくは「相手がされて嫌なことをしない」。自分と相手で嫌に思うことは違う。
外で遊ぶのが好きな子もいれば体を動かしたくない子もいる。何でも話したい人もいれば必要なことだけぽつりと話したい人もいる。人に危害を加えるなどは勿論ダメとして、物事の捉え方は人それぞれ違う。例えば自分は何かに集中して入りこんでいる時に話しかけられるのが苦手だが、別にいつでも話しかけてもらえたら嬉しいという人もいる。自分を基準に考えると選択を間違える場合がある。
相手への気遣いの範疇であれば間違いも良いが、怖いのはこの理論が反転すること。つまり「この人は自分にとって嫌なことをしてくる。相手も分かってるはずだから、自分に嫌がらせをしたいのか?」と考える。実際はその人としては全然悪意はなく、当人にとって自分がされても嫌に思わない行為の場合がある。社会人になってからこういうすれ違いを多く目撃するようになり、自分と相手を対称で考える危うさを感じている。
目指したいのは「相手がされて嫌なことをしない」。でも他人のことは分からないので難しい。ではどうすれば良いかというと、その人に聞くしかない。相手の話をしっかり聞き、反応を伺い、慎重に距離を縮める。その人をよく知るとその人視点で考えられるようになる。あとは自分もいろんな経験をすること。良い経験もそうだが失敗などのマイナスの経験は特に自分の糧になる。病気になった人のしんどさは病気になったことがある人しか分からない。痛みや弱さを知ると人の心に寄り添えるようになる。