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エンジニアの日記帳。ものづくり、プログラミング、読書などについて書いてます。

同じ方向を物理的に向く

2024/11/16

前職で働いていたとき、カンバンという方式でチームのタスクを管理していた。壁に大きな模造紙が貼られており、そこにタスクを書き出した付箋が貼られる。左から「やること」「進行中」「完了」とレーンが分けられており、開発の状況にあわせて付箋が右に移動していく。そこを見れば今何を作っているか分かる、タスク管理の優れた方法だ。

模造紙と付箋のアナログな運用には面倒な部分がある。例えばリモートで働く人だと更新できない、遠くの会議室で打ち合わせするときに持っていくのが大変、タスクが増えてきたときに付箋や模造紙のスペースが不足するなど。こうした問題を解決するためにデジタルのツールが選ばれる。オンラインでカンバンをつくり、そこでタスクを管理する。インターネット上ならどこからでもアクセスできるし、スペースは無限だ。

しかしデジタルで運用していると物足りなさを感じる。それが何か突き詰めていくと、「一緒に同じ問題に立ち向かっている感」が足りてないのではないかと思う。壁に貼られた模造紙をみるとき、メンバーは全員壁の方を向いている。これは物理的に同じ方向を向くことになり、「自分たち v.s. 解決すべき課題」の構図がつくられる。デジタルの場合は各々の画面を見る。自分の仕事には集中できるが、一丸となる感覚は少ない。

家族の食卓でも、向かい合って座るよりも横並び、あるいは90度の位置で座る方がケンカが少なくなるという話がある。向かい合っていると対立構造のようだが、横並びなら同じチームのように感じられる。物理的な配置は捉え方や考え方に影響している。

模造紙の好きだった点として、いつでも壁にあって通りがかりに目に入ることがある。トイレに行くときやランチの帰りに自然と目に入る。通路を歩く他チームの人に何をしているかちょっとだけ知ってもらえる。この体験はリモートワークでは置き換えられていない。開発状況を可視化したダッシュボードはオンラインで作れるが、それは各メンバーが意識的に見る必要がある。模造紙のように、あちらから少しだけメッセージを発してくれるような方法はまだない。

タスクが完了したときは付箋を物理的に動かすが、それは小さな達成感を感じるタイミングになる。今はフルリモートの環境で働いているが、紙に今日やることを書き出して終わったらそれを打ち消し線で消していっている。仕事は毎日続く。ゴールのないマラソンは精神的に負荷が高いので、一歩ずつ前進している感覚を掴むことは大切だ。