「確率思考の戦略論」を読んだ
「確率思考の戦略論」を読んだ。USJ、西武遊園地、ネスタリゾート、最近ではジャングリア沖縄を手がける森岡さんの本。マーケティングに興味がありたまに本を読むが森岡さんとN1マーケティングでお馴染み西口さんの本にはハズレなし。
私たちが何かを買おうとするときの思考パターンには型がある。その商品のカテゴリ(例えばヒゲ剃り)を買おうとしたとき、知名度に頼ったり事前に情報を仕入れたりするが、最終的にはサイコロを振って出た目によりどれを買うかを決める。このランダム性があるので100%自分の商品を選んでもらうことはできない。できるだけ高確率で選んでもらうにはサイコロの多くの面に自分の商品のラベルを貼ること。十面ダイスのうち7つの面に記載されていれば選ばれやすい。この多くの面を取ることがマーケティングの本質的な仕事になる。
多くの面を取るにはユーザーに憑依し、「本能にぶっ刺す」コンセプトを作ること。ユーザーの本能を体験するために森岡さんは猟師になったりスマホゲームに数百万円を重課金したりする。ユーザーの本能が求めているものが分かれば何を訴求すべきかが分かる。訴求すべき点が分かればアプローチの方法を探せる。丸亀製麺のマーケティングを引き受けた時、市場調査でうどんには「尽くされる安心感」というイメージが付与されていることに気づく。これはそばやラーメンの調査では出て来ずユニーク。では丸亀の中でこのポイントを訴求できる点はあるのかを探す。そして「すべての店が各店舗でうどんを打っている」事実を知り、そこを軸に展開して見事成功。手先のテクニックやトレンドに従うのではなく本質的な価値から施策に繋げる大事さが多くの実例とともに紹介されている。
本筋とはズレるが個人的に面白かったのが「自社製品を安く買えるような福利厚生はやめろ」というもの。自社製品を大幅にディスカウントして手に入れてしまうとユーザーの気持ちになれない。高級レストランに自分のお金で行くからこそサービスに求めるものを知覚できる。福利厚生でそれを奪ってしまうのは本末転倒であり、高額で手が出しにくいのであれば給与を高く設定すれば良いだけという主張。自社で開発しているサービスでも自分で課金して使っている人はどれくらいいるのか?憑依の話といい、ユーザーの目線になりきることからマーケティングは始まる。