本を読むと何が良いのか

2024/09/18

趣味の一つに本があり、エッセイ、日記、ノンフィクション、小説、自己啓発、ビジネス本、技術本などジャンル問わず幅広く読んでいる。仕事の忙しさや気分によって波があるが、1ヵ月1万円分読むのをなんとなく目標にしている。この1万円というのは確か「レバレッジ・リーディング」に書かれていた金額で、社会人の始めの頃にそのアドバイスに触れて、よくわからないけどいったんこの基準でやってみよう、としたのが今でも続いている。特に社会人初期は本に1万円使うのはお財布的な影響が大きかったが、読書の習慣がついたことはそれを遥かに上回る良いことがあった。

SNSはレコメンドエンジンが発達し、自分の興味関心に沿った情報だけが流れてくる。日常的に自分の考えと近いものばかりに触れるようになり、さらにその考えが強化される。エコーチェンバーやフィルターバブルというキーワードで指摘される現象だが、これは世界の分断を生む。自分から見える景色が強化されすぎて他の人の意見や価値観に耳を傾けるのが難しくなる。読書はこれを解決してくれると思っていて、他人の考えや世界を知ることができる。例えば最近『「コーダ」のぼくが見る世界――聴こえない親のもとに生まれて』を読んだが、こういう本を読まなければその人の体験や心情を知る機会はなかなかない。いろいろな考えを知ることは明日からの仕事に使えるわけではないが、相手の立場に立って考える(共感/エンパシー)のに大事なこと。自分の価値観は限定的な世界で培われたもので、その価値観を人に押し付けてはいけないな、と最近はよく思う。

エンジニアの世界ではXが人気で、最新の技術動向はXで得られるといっても過言ではない。エンジニアは情報をオープンにする傾向があると思うが(OSS=オープンソースソフトウェアという文化がある)、Xはその性質と相性がよく、技術を試したり何かを作ったりするとそれをXでシェアすることが多い。界隈の人をフォローしておくと、いまこれが流行ってるんだなとか、みんなこういうのを最近勉強してるな、みたいなのをなんとなくキャッチできる。トレンドというのはふわっとしていてGoogleでは調べにくいものだが、Xのおかげでぼんやりと可視化されている。

ただXで得られるのは断片的な情報なので、そればかり追っていると上辺だけの知識で終わってしまう。エンジニアといっても実際の仕事内容は幅広いので、いろんなトレンドを当てもなく追っていると膨大すぎて疲れてしまう。最近はAIニュースに派手に驚く人も増え("プロ驚き屋"と揶揄される)、彼らはインプレッションを稼ぐために実態より誇張して評価する。Xだけを見ていては地に足をついた学習は難しい。ここでも読書が解決策になる。

技術本はそのトピックが体系的にまとまっているので、一通り読みながら手を動かすと全体感が掴める。実際にコードを書いたり、自分のプロダクトに当てはめて考えたり、そうすると確実に身になる。Xのように10分とかで読み終えることはできないが、時間をかけたリターンは確実にあると思う。何か新しい分野を学びたいとき、オススメなのはまずそのジャンルの本を3冊くらい読むことで、3冊読むとけっこう同じ内容が書かれている。そうするとそれは核の部分なんだなと思うし、逆に特定の本にしか書かれていないのならその著者の思いとか、限定的な状況で活きる方法だと理解できる。入門のときこそ本は重宝する。

何かに悩んだり苦しんだりするとき、本に救われたことが何度かあった。自分のモヤモヤが言語化される、新しい視点を授けてくれることもあったが、内容関係なく読書そのものの時間が救いになることもあった。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読んでいたときは、毎晩寝る前にちょっとずつ読み進めていたので、ベッドに行くのが楽しみになった。どの場面も本当におもしろく、どんどんページが進むが意識的にそれを止めて眠る。翌日この続きを読めるというのがうれしい。読み終わってしまったときは明日からベッドで何をすればいいのかと悲しくなったほど。フィクションでもノンフィクションでも、本を読むのは面白い。