正射必中
「正射必中」という言葉がある。弓道において、正しい射法であれば必ず的に当たるという意。的に当てようとしすぎるとフォームを崩す。意識すべきは的ではなく正しく射るその姿勢にある。
目的をもって行動することが賞賛されているが、目的だけを見て視野が狭くなっていては勿体無い。達成したいがあまり強引な方法をとってしまっては長期的には損失が大きい。その目的に向かう正しい方法を考え、それを保つことを意識する。正しいプロセスを磨き続ければいずれ必ず目的地には到着する。
Webサービスの成長を真面目に考えると、売上の構成要素をまず分解し、次に各要素をどう伸ばしていけるかを議論することになる。この進め方自体はとても良い。曖昧に「売上を上げよう!」と言っていても聞き手は何をしたら良いのかわからない。細かく分解して自分の手に追える範囲に落とし込むことで初めて行動につながる。例えばWebサービスの「継続率」はひとつの要素になりやすい。継続率をあげるためには翌日また訪れてもらうにはどうすればよいかを考える。質の高いコンテンツを提供する、明日のお得情報を伝えるなど具体的に考えられる。チームの目的と行動が一致していれば推進力は大きくなる。
しかし正しいフォームを意識できてなければ歪んだ方向に進む。例えば「毎日メールやプッシュ通知を配信する」。大量のメールやプッシュ通知を送ればサービスに来てもらえる確率は当然あがるので継続率は向上する。しかしお知らせする内容が価値の低いものであればユーザーは離れていくだろう。目先の継続率はあがっても長期的にはサービスの価値を毀損する例としてよく挙げられる。
ではどうすればよいか?「継続率」という指標だけではなく、そのWebサービスが作りたい未来をチームで共有する。ユーザーの生活をこう変えたい、5年後にはこういう状態でいたいというビジョンが共有されていれば、目先の目標達成のために曲がった行動は取られにくい。大抵の使いづらい機能は悪意ではなく、むしろ目標達成のために一生懸命考えられたものが多い。一生懸命考える努力の方向を揃える。チームとしてどうありたいか、正射必中の意識が必要だ。