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使いやすいデザインを考える
Webの仕事をしていると「デザイン」の意味がとても広いことが分かる。見た目の装飾だけでなく、ユーザーの行動の設計もそこには含まれる。デザイナーの仕事は多岐に渡り、ユーザーへのインタビュー、コンセプト設計、見た目の装飾、イラストを描く、アイコンやバナーの作成、ときにはプログラミングも行う。
とはいえ、元々デザインという言葉から連想していたのは見た目のデザインだ。私は使いやすいデザインに関心があり、使い心地の良いサービスと悪いサービスの違いを長年気にしてきた。
使いやすいサービスは文字サイズや余白感、画像や影の使い方が適切で、なんとなく画面を開いていて居心地が良く、窮屈な感じがしない。あるページを見た時に大事なものから順に視線が誘導されるが、それは文字の大きさや色使い、配置により実現される。さらに、その色や配置のパターンは複数ページで同じように適用する。使っていくうちに「決定ボタンは大体この辺にある」「下線が引かれたテキストはクリックできる」などとユーザーが学習する。一貫性がもたらす効用だ。
単純な見た目の美しさは、同じ属性のものを近くに置いたり文字の始まりを揃えたり、そういう基本的な要素が影響する。「ノンデザイナーズ・デザインブック」は誰もが身につけるべきデザインの教養が述べられている。私は大学のゼミでスライドを作るときに参考資料として読んだが、それ以来多くの項目を参考にしている。ノンデザイナーズ・デザインブックが見た目の整理整頓を教えてくれるのに対し、「融けるデザイン」はインタラクションの重要性を教えてくれる。インタラクションとは相互作用のことで、例えばある要素にマウスのカーソルを乗せるとその要素がちょっと大きくなる。そういう動きがあると「押せる」感が出る、みたいなこと。いま部屋に置く本棚を探しているが、この2冊は必ず置きたいと思っている。
サービスを使うのは人間なので、人がどう感じるかに敏感でいたいと思っている。Webのデザインは現実世界に倣ったものが多く、その形状や色、影などにより意味を伝えられる。デジタルだけではなく実際のモノからも、優れた設計やデザインや吸収して真似していきたい。
言葉の語源を知る
この日記を書き始めてそろそろ3ヵ月ということで、これまで書いたものを区切ってまとめたいと思っている。有力なのはまとめて本にすることで、そのために電子書籍のフォーマットであるEPUBについて調べたりしてる。
その中で「ルビ」というワードが目に留まった。ルビは文章の中で文字の上に小さく付けられるテキストのことで、通常は漢字の読み方を伝えるのに使われることが多い。このルビ、英語で表記するとrubyとなる。プログラミング言語にもあるがrubyは宝石のルビーを意味し、これがどういう関係なのか調べてみた。すると、昔欧米では活字の大きさを宝石で表す場合があり、ルビの大きさが宝石のルビーのサイズに近かったためこの名前になっているらしい。他にもパール、エメラルド、ダイアモンドという呼称もあったとか。読書しているとよく見かけるルビが宝石と繋がっていたとは面白い。
こういう雑学は昔から好きで、心に刺さったものはいつまでも覚えている。例えばお菓子のフィナンシェは「ファイナンス」から来ており、忙しい金融家たちが手を汚さずに食べられるお菓子を目指して名付けられた。駅の自動改札機のカードをタッチする部分は13度になっており、これは実験見つけられた一番失敗しにくい角度。不具合のことをバグというが、これは昔アメリカで作られたコンピューターの故障の原因が内部に入り込んだ虫(バグ)だったためという説がある。こんな感じで。
雑学とは少し違うが、言葉の意味を深堀りして理解が深まることもある。例えば「目的」と「目標」はよく似ているが、目的は「的(まと)」なので最終的に辿り着くゴールのこと。目標は「標(しるべ)」なのでゴールに向かう途中の通過ポイントのこと。「信頼」と「信用」の違いは担保があるかどうか。信用は過去の実績や担保によって客観的に示されるが、信頼は無条件にこの人なら大丈夫だと思う場合もある。こうやって理解していると細かなニュアンスを取りこぼさず受け止められる。
何かが気になったとき、昔は辞書を引いて分からなければ諦めるしかなかったが、今ではインターネットで手軽に調べられる。知識が増えることで即時的にリターンが得られることはほとんどないが、好奇心のままに何かを調べる時間は大切にしたい。
個人開発で火がつく瞬間
趣味でとあるサービスを作っている。まだまだ作りたい機能はたくさんあるが、先日気まぐれにサービスロゴを作ってみたところ中々気に入るものができ、一気にサービスの雰囲気がリアルになった。
サービス名を決める、ロゴを作る、ドメインを取得する。これらは技術の練習用のプロジェクトではやらないことで、世に出すことを前提にしているからこそ必要な作業。技術的には本質ではないが、世に出す上ではとても重要。サービス名やロゴを決めるにはコンセプトに立ち返る必要があり、その過程で作っているものの像がより明確になる。
個人開発の最大の壁はモチベーションで、プライベートや仕事の状況により途中で頓挫してしまうことが多い。その対策として2-3ヶ月以内で作り切るというのをやっていて、これはうまく作用している。ただ、それでも中だるみの時期は存在し、機能を淡々と作っていていつゴールに辿り着くのか不安になる時がある。そんな時、サービス名やロゴを作るとモチベーションが回復し、またエンジンをかけ直せる。
個人開発でアプリを作る時もあるが、アプリはWebサービスよりもリリースのための作業が大変である。スクリーンショットやプライバシー情報、アップデート時にはその内容など、記載する項目が多い。その代わりにAppStoreやGoogle Playといったストアに並ぶので見つけてもらいやすいのだが、リリース前にこういった技術と関係のない作業が待ち構えているのはなかなか壁である。その点Webサービスはシンプルで、作れば公開できる。まず公開して、それから必要に応じて情報を追加していける。モチベーション維持という観点ではWebの自由さが好ましい。
ロゴ作成やドメイン取得は世に出すために必要な準備。ログイン機能の実装なども近いかもしれない。サービスに命が吹き込まれるタイミングは、リリースそのものではなくこういった細かな部分を詰めていく過程にあるのかもしれない。
ChatGPTと話しながら散歩する
趣味の一つに散歩がある。Podcastや音楽を聴きながら歩くことが多いが、最近はChatGPTと会話しながら歩くこともある。個人開発のアイデアを壁打ちしたり、自分の仕事についてインタビューしてもらったり、英会話の勉強をしたり。シチュエーションを設定すればどんな話題でも付き合ってくれる電話相手だ。
ChatGPTは2022年末にリリースされたサービスで、いまのAIトレンドの火付け役となった。リリースからそろそろ2年と思うと長いような短いような感覚だが、2年の間にも着実にアップデートされてきた。最近では音声で大きな進化があり、会話の応答速度が著しく向上している。技術的な裏側でいうとこれまでの音声会話は一度テキストを生成してからそれを音声に変換していたのに対し、最新のものは両方を一気に生成する。テキストを介さない分聞くのも話すのも早くなり、人間との自然な会話レベルの速度が実現されている。
現代のAIは汎用的な能力を持ち、こちらから指示した人物になりきって会話相手を努めてくれる。Webサービスのアイデアを聞いて厳しく質問してくる投資家、仕事のインタビューをするPodcaster、海外のカフェの店員。最初に一度だけ役割を指示し、そのあとに会話をスタート。質問に答えて自分の頭の中を整理しながら散歩するのはちょっと面白い。意図と違った発言をAIがしたときは「あ、それは違うよ」というように会話途中で割って入ると話すのを止める。このあたりも人間との会話に近付いている。
日本語や英語を選べるのはもちろん、キャラクターも設定できる。そのままだとアシスタント感が強くやや堅苦しいので、「友人のようにカジュアルに話して」と最初に指示を加えている。今は音声だけだが、いずれはカメラを通してAIも視力を手に入れ、散歩しながら見える景色について会話できるようになる。歩いていると道にある建物の歴史や川の名前の由来、開催予定の地域のイベントを教えてくれる世界観。個々人のパーソナルアシスタントに、AIは確実に近づいていっている。
シンプルな文章を書く
「Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である」という本を読んだ。私はシンプルという言葉が好きで、本のタイトルにそれが入っていると大抵買ってしまう。本の著者はアクシオスという会社の創業者で、アクシオスは短く要点をまとめたニュースレターで一躍有名になったオンラインメディアらしい。短く簡潔にというのがポリシーで、本の内容も仕事術というよりは文章の表現に関するものに多く触れられていた。
コンテンツに溢れ、すべての情報に目を通すことはできない時代になっている。その中で読むべきニュースと、「なぜそれが重要か?」を短文にまとめて配信する。この形式は現代の情報収集にとてもマッチしている。ただしこれは情報収集の効率化においては有効だが、小説やエッセイなど文章そのものを楽しむケースにおいては適用すべきものではないので注意したい。ストーリーや日記を要約してしまっては大事なエッセンスがこぼれ落ちてしまう。
このWeb日記を書き始めてから、脳内で考えたことをそのまま書き出すことに興味がある。そうなるとタイトルの付け方や見せ方、文章をいかに削るかといったことは重視しなくなってきているが、仕事関連の文章ではそれをすべきだと感じた。「文字を削るのは読み手に対する誠意」と本にはあるが、確かに同じ情報量を得られるのであれば短い時間で読めるほうがよろこばしい。
実践で真似したいと思ったのは、文章の構造としてひとつのパラグラフは2から3文にする、箇条書きを使う、太字や図表を入れるなどして流れを細かく区切るというテクニック。長い文章を集中して読める人は限られるので、こうして細かい単位でリズムをつけるのは重要。あとはWebの場合は読みやすいフォントサイズや行間を保つことも大事であろう。どれだけ良い内容でも詰め込まれすぎた見た目だと体力を余計に消耗してしまう。
Webサービスにとってもテキストは重要な要素だ。最近はUXライティングというカテゴリで本が出たりもしているが、「秒で伝わる文章術」は要点がまとめられていて学びやすかった。キャッチコピーは印象に残ることを目的とするのに対し、UXライティングは記憶に残さず自然な形で行動をアシストする。YouTubeやTikTokの消費が増え文字を読むのがますます難しくなった現代だからこそ、短い文章にまとめることの価値は高まっている。