褒める時はストレートに褒める
大学時代、受講者が週替わりでWebの技術について調べて発表する授業があった。自分は確かActionScriptというプログラミング言語の特徴について調べ、簡単なデモを交えながらみんなの前で紹介。授業の後に同じ受講者の一人から「一週間で準備した発表とは思えないね」と言われた。その時の自分の感情は「どっち?」である。
顔を見ると少し笑った顔だった。「一週間も準備してこの程度?」とも取れるし、「一週間でよくここまで準備できたね」とも取れる。「それはどっちの意味で?」と聞けばよかったかもしれないが関係性もそこまでなく当時はできなかった。なぜかこの時のことはよく思い出す。今考えてみると褒めてくれてたのかなと思うが、それならもっと分かりやすい言葉で褒めてほしい。疑念を持たせない必要はまったくない。
誰かを褒めるときはできるだけストレートに褒める。自分の思ってるすごいと思った点を並べて伝える。褒めてますよ、尊敬してますよ、それはすごいことですよ、と態度や表情でも表現する。混じりっ気なしの賛辞を相手に送る。そんなことを意識している。
会社のチャットにはGoodworkチャンネルというものがあり、社内メンバーの良い仕事がそこに流れてくる。チャットには「Goodwork!」スタンプが用意されていて誰でも利用できる。そのスタンプがつけられた投稿がGoodworkチャンネルに流れてくるという仕組みだ。会社に関わる人数が増えると他の人が何をしているか見えづらくなってくる。いろんな人たちの活躍が可視化されるこのチャンネルは面白い。
褒める時は人前で褒める。周りに認められると仕事がしやすくなり、さらに成果が出しやすくなる正の循環が回る。注意する時はこっそりと注意する。フィードバックは本人に届けばよく、周りに人がいると無駄に状況を複雑にしてしまう。人が多数いると空気を読んでしまったり見栄を張ったりしてしまい、素直なやり取りが難しくなる。人前で叱りつけるのはやってはいけない。フィードバックだと前向きに捉えられる人もいるが、そうでない人もいる。自尊心を欠いて良い仕事はできない。
「No No Girls」が面白い
最近No No Girlsというオーディション番組を観ている。女性グループのオーディションで、プロデューサーはちゃんみな。「No」と否定されてきた、痛みを抱えた人たちが参加する。ちゃんみなは体型や容姿ではなく歌やダンスの表現で選考する。
ちゃんみな自身も元々ガールズグループを目指していたらしく、オーディションに参加しては落とされるのを18回繰り返してきたらしい。結局今は個のアーティストとして成功しているが、Noを突きつけられてきた時期の苦しさはよく知っている。オーディション番組は厳しくジャッジされるものが多いようだが、ちゃんみなのかける言葉はどれも優しい。努力を認め、才能を引き出してくれる。オーディションなので途中で脱落する人もいるのだが、そういった人たちにも落ちた理由を誠実に伝え、今後どうしていくべきかの相談にも乗る。オープンで誠実な態度に学ぶポイントが多々ある。
審査ではダンスの振り付けを作ったり自分たちで歌詞を書いたり、実際の曲づくりの過程が見れて面白い。参加者のレベルはとても高くてパフォーマンスのたびに歌もダンスも感動する。素人の自分目線だとこれでなぜ今まで落ちてきたのかと思ってしまうが、アイドルとして売り出すにはスキルだけではない部分もあるのだろう。オーディションに落ちてきた経験、君には無理だと言われた経験は心に突き刺さっていて中々抜けない。スキルが高くても自信を持てず、自身を愛せない。そんな参加者たちにちゃんみなは「自分のやってきたことを自分が肯定する」大事さを説く。今ある歌やダンスのスキルは頑張ってきた成果。過去の自分に中指を立ててはいけない。
ちゃんみなの見抜く力にも感銘を受ける。歌やダンスの表現の部分はもちろん、日常的なストイックさが足りないとか、表現の幅が狭いのでもっといろんな音楽を聴いた方が良いとか、一人一人をよくみて気づいた点を言語化してフィードバックする。自分が特に好きなのは「自由になるには一度型にはまらないといけない」という言葉。自分のやりたいスタイルにこだわるあまりアドバイスを取り入れづらくなっていた参加者にかけた言葉だが、どの道でもいえる真理だと思う。やりたいことをやる、自由に表現するためには一度型にハマる必要がある。そしてこれはSKY-HIが言ったものだが「自分の輪郭を塗りつぶす作業が必要」という言葉。自分はこれ、と決めつけず色々な曲を聴き表現にチャレンジする。これはしっくりくる、これは違うと振り分けるうちに自分らしさの輪郭が見つかる。それは思っていたよりも大きいかもしれない。この作業をせずに自分を固めてしまうのは勿体無い。
いま5次選考で次が最終審査。ここまで残った人はさすがにみなレベルが高い。楽曲発表は毎回ワクワクさせられる。毎週金曜に配信でYouTubeで見れるので、興味があればぜひ見てください。
誰もが「新しい時代が来た」と言いたがる
IoT、ブロックチェーン、AI、DX。いつでも誰かが「新しい時代が来る」と言い、常に革新が起きるとされている。
「逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知」を読んだ。最近ハマってる楠さんの本で、その時々の流説に惑わされず本質を見極めるための指南書。「DXで時代は変わる」「AIについていけないと終わる」などの煽るような言説がどの時代にもあるが、それはそういうことで得するプレイヤーがいるから。例えばメディアは大げさに言って注意を引く必要がある。投資家は激動の時代にして変化率を高め自分たちの投資のリターンを大きく跳ねさせる必要がある。この本では過去にもてはやされた説を振り返りつつ、その正体を時代背景と合わせてひとつずつ紐解いていく。
何かのブームが起きるとき、必ず成功事例と共に流布される。セブンイレブンやヤマト運輸はITをうまく活用して他社と差をつけた。これを見てウチもITだ!としても中々上手くいかない。企業には文化や環境の土台があり、そこに馴染まないものを持ってきても花開かない。セブンイレブンやヤマト運輸は「IT化」のトレンドが来る前から情報をうまく使うことを戦略としていた。戦略が先、ITが後。どんなトレンドもそれ自体が本質になることはなく、企業が目指している目的に辿り着くための手段に過ぎない。
先に文脈があり後から名前がつけられる、というのでいつも思い出す例がある。前職のヤフーには1on1という文化があり、これは上司と部下が定期的に話をする場を設けるというもの。上司は教えるというよりは部下の話を聞くことにフォーカスし、本人の中にあるものを引き出すことで能力を発揮させる組織開発の手法のひとつだ。私が入社した時はまだ1on1という言葉はなかったが、それをすでに実践している先輩がいた。部下の話を聞くことが大事だと思っているからやる。それに後から1on1という名前がつけられる。ワードになることで体系化されたり人に伝えやすくなったりはするかもしれないが、その本質は変わらない。
本の話に戻ると、他にもいろいろと面白い内容が紹介されている。サブスクという言葉は2018年頃からのもので歴史が浅く、普及にはスマートフォンによる決済の簡易化の影響が大きい。現代は「人口減」が問題と言われているが、少し過去には「人口増」が問題とされていて様々な対策が打たれていた、など。最近は毎日「AIが世界を変える」と言われ続けてもうよくわからなくなっている。革新はある日突然起こるものではなく連続的に少しずつ変わる。情報に踊らされることなく、自分で考えたり試したりして地に足をつけて一歩ずつ進みたい。
目に触れたものについて考える時間が増える
人は意識的に生きているようで受動的で、周りの環境に左右されやすい。コンサルとして有名な大前研一も「人間が変わる方法は3つしかない。時間配分を変える、住む場所を変える、付き合う人を変える」と言っている。「最も無意味なのは決意を新たにすることだ」とも。また別の人物は「まわりにいる5人の平均が自分」という。話し方、言葉遣い、趣味、年収、思考。普段どんな人と接しているかで考え方が変わるのは肌感とも近い。
Xのおすすめのタイムラインでは毎回新鮮なトピックが提供され、誰かが何かを言っている。それを見ると気になって調べたり、世間の反応を探ったり、自分なりの意見を考えたりする。それが自分の考えを深めるなら良いが大抵は一過性で翌日には忘れてしまう。思考を活性化させるのに外部からの刺激は大事だが、それなら本を読めばいい。偶然出会う玉石混交の情報に振り回される必要はない。しかしXのタイムラインでもYouTubeのショート動画でも、現代のWebサービスは注意をひくための仕組みを改善し続けている。無料で使ってもらって広告で儲けるサービスなら当然なのだが、そこから逃れられるかが各個人の意思にかかっているとしたら不利な勝負すぎる。
自分の過ごしたいように時間を過ごすなら、まず環境を整える。仕事する場所を定め、そのまわりに目標や時間の過ごし方について書いた紙を張る。自然に目に入るようにしておく。パソコンのデスクトップにバーチャルな付箋を貼るのでも良いが、張り出された紙の方が目に入る機会が多いので良い。スマホのロック画面に文字を書いておくのでも良い。意識せずとも目に入るところに置いておくことが大事。
以前は一日の時間の使い方を紙に書いて張っていたが、引っ越しのタイミングでどこかに行ってしまった。そうすると習慣が崩れて今はダラダラと過ごす時間が増えた。この日記も朝8時くらいに書いていたが今なんと14時である。土日も平日と同じリズムで過ごした方が良いことは知っている。知ってはいるが実践できないこともある。意思を強くする方向ではうまくいかない。壁に紙を張り出し、目に入る機会を増やすという仕組みで改善を試みたい。
4年ぶりにMacを新調した
新しいMacを買った。前回は2020年に買ったので4年ぶりの買い替え。最近は物欲が下がっており、新しいガジェットを買って届いてもしばらく未開封のまま放置していたりもしたが、今回は到着を楽しみにして受け取り次第すぐセットアップ。本当に必要なものを買うのは幸福度に直結する。
4年も経つといろいろ性能があがっているが、一番の変化はディスプレイを「Nano-texture」ガラスに変えたことかもしれない。これは2万円弱追加で払うと変更できるもので、画面への光の映り込みを軽減してくれる。通常のガラスだと光をそのまま反射する。綺麗で美しくはあるが、照明の光や背景の映り込み、キーボードを叩く自分の手などが反射してややノイズになる。Nano-textureは光を拡散してくれるのでこれが軽減される。この違いは使ってみないと分からないと思うが、自分は光に敏感で疲れやすい特徴があるので2万円の価値は十分感じられている。
さて、実はMacを注文した当初はNano-textureではない通常ガラスで購入していた。手元に届くまでの間にいろいろ調べていてNano-textureが良さそうだと知る。通常だと自分の下調べの甘さを嘆くシーンだが、Appleの製品は購入後2週間は無料で返品できる。それを知っていたのでNano-texture版も追って購入。一時的に2台分払っているのでお財布には痛いが、納得できる買い物ができた。気軽に返品ができると臆せず買える。返品された時のオペレーションの大変さを想像してしまうが、購入者にとって良い体験を提供してくれてありがたい。
Macのデータ移行もとても簡単になっており、昔のMacと新しいMacを並べて同じネットワークにつなげ、転送ボタンをポチッとするだけでほぼすべての情報が転送できた。iPhoneを買い替えた際に2台を重ねてデータ転送できるがあんな感じ。ファイルやアプリケーションはもちろん、環境設定などすべての情報が引き継がれる。これは想像以上に便利で、開封してから1時間後には新しいMacの方でプログラミングをしていた。来年にはAppleのAIであるApple Intelligenceが日本でも使えるようになる。Macの画面をAIに見せてアドバイスをもらったり、声で指示してAIに直接操作してもらったり。どんな形になるかは分からないが確実に便利な変化が来ると思うので期待している。